「PERが低いから買う」「RSIが30以下だから反発する」。指標は企業や値動きを比較する材料ですが、数字だけで利益が決まるわけではありません。この記事では、指標の計算条件を確認し、企業の資料と照合して、購入前の判断を記録する手順を説明します。
ファンダメンタルズ分析は事業・利益・財務などを調べる方法、テクニカル分析は価格や出来高の動きを調べる方法です。長期保有と短期売買では重視する項目も変わります。まず目的と保有期間を決め、数値の見た目だけで売買しないようにしましょう。
ファンダメンタルズとテクニカルは、何を調べる方法?
投資対象を調べるときは、企業の状態と市場での値動きを分けて記録すると、判断の根拠を整理できます。事業の将来に期待していても、短期の株価が上がるとは限りません。反対に、株価が上昇中でも、業績が改善しているとは限りません。
| 分析 | 主に調べること | 購入前の問い | 限界 |
|---|---|---|---|
| ファンダメンタルズ(バリュー) | 事業、業績、財務、株価と企業価値の関係 | 何を買う候補にするか。利益の持続性を説明できるか | 企業価値の見積もりには仮定が入り、割安に見えても長期間評価されないことがある |
| テクニカル(プライス) | 価格、出来高、値動きの方向や強弱 | いつ検討するか。今の値動きと予定する保有期間が合っているか | 過去のデータを使うため、決算やニュースによる急変を事前に確定できない |
本記事では、企業の資料で購入候補を調べた後にチャートを確認する順番で説明します。これは学習を進めるための一例です。長期保有なら事業の見通し、短期売買なら値動きと取引費用など、目的によって確認の比重は変わります。
ファンダメンタルズ分析:指標の中身を確認する
| 指標 | 基本の式 | 数字と一緒に見るもの |
|---|---|---|
| PER | 株価÷1株当たり利益(EPS) | 実績か会社予想か、一時的な利益が含まれるか、同業の成長率 |
| PBR | 株価÷1株当たり純資産(BPS) | 資産の内容、収益性、減損や赤字の見通し |
| 配当利回り | 年間1株配当÷株価×100 | 実績か予想か、普通配当か記念配当か、利益と資金繰り |
PER15倍以下やPBR1倍未満は、全銘柄に共通する購入基準ではありません。同じ業種でも成長期待や財務の条件は違います。PERは赤字や利益がゼロに近い場合に比較しにくく、PBRも純資産が小さい・マイナスの場合は通常の比較に向きません。表示が空欄でも「安い」と解釈しないでください。
架空の例:利益が変わるとPERも変わる
株価1,000円、EPS100円ならPERは10倍です。ところが利益の一部が資産売却などによる一時的なものだったり、来期EPSが50円に下がる見込みだったりすれば、同じ株価でも来期予想PERは20倍になります。株価が下がらなくても、利益の前提が変われば評価は変わります。
PBRも同様です。株価800円、BPS1,000円なら0.8倍ですが、これは帳簿上の純資産との比率です。「1,000円で必ず換金できる」「株価が1,000円に戻る」という意味ではありません。赤字で純資産が減る可能性や、資産の評価を企業の資料で確認します。
企業の資料を読む順番
- 企業のIRサイトで最新の決算短信を開き、対象期間と会社予想を確認する。
- 売上・営業利益・EPSの増減と、その理由を決算説明資料で調べる。
- 有価証券報告書などで、事業のリスク、負債、営業キャッシュフローを確認する。
- 同業他社と同じ時点・同じ実績/予想の条件で比較する。
- 増配・減配の理由と、配当を継続するための利益・資金を確認する。
高い配当利回りは、配当の増加だけでなく株価の下落でも生じます。減配や株価下落があれば、配当を受け取っても投資全体では損失になり得ます。利回りだけで候補を決めず、配当方針と事業の見通しを確認しましょう。
株主優待をきっかけに銘柄を選ぶ場合は、株主優待6社の内容・必要資金・保有条件を比較した記事も参考にしてください。優待の使いやすさと、企業の業績・財務を合わせて確認します。
テクニカル分析を3つの役割で整理する
指標を増やす前に、「どの疑問を確かめたいのか」を決めます。下の分類は学習用の整理で、指標によって複数の性格を持つものがあります。
| 分類 | 確認すること | 代表例 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| トレンド系 | 価格の方向と流れの継続 | 移動平均線、一目均衡表 | 変化を捉えるまで遅れが生じる。横ばいではサインが繰り返し反転しやすい |
| オシレーター系 | 値動きの偏りや勢いの変化 | RSI、ストキャスティクス、RCI | 強いトレンドでは高い・低い水準が続き、逆張りが裏目に出ることがある |
| 需給系 | 取引の活発さや売買の偏り | 出来高、価格帯別出来高、信用残 | 集計対象と公表時点が異なる。出来高だけでは参加者の意図は分からない |
MACDは移動平均線を使い、方向と勢いの両方を調べる性格があります。分類名を覚えるだけでなく、元になるデータ、計算期間、どんな相場で使いにくいかを確認しましょう。初めは価格・移動平均線・出来高に、RSIなど1つを加えて記録する程度でも比較の練習はできます。
チャートの基本:時間軸・ローソク足・移動平均線
日足は1日、週足は1週間の値動きをまとめます。ローソク足の実体は始値と終値、ヒゲは高値と安値の範囲を表します。色の設定はサービスごとに異なるため、赤や青という色だけで判断せず表示設定を確認します。
サンプルの読み方:始値・終値とヒゲを確認する
陽線の例は100円で始まり、110円で終わったので、実体が100〜110円の範囲になります。途中では115円まで上がり、95円まで下がったため、実体の上と下にヒゲが伸びます。陰線の例は110円で始まり、100円で終わったので、実体の上端が始値、下端が終値です。
4つの価格だけでは、高値と安値のどちらを先につけたかは分かりません。また、陽線は「その日の終値が始値より高い」という意味で、前日終値より高いことや、翌日も上がることを表すものではありません。前日終値が120円なら、この陽線の例の終値110円は前日比では下落です。
長い上ヒゲや下ヒゲは、その期間の価格の振れ幅を調べる材料です。1本だけで反転を確定せず、前後の足、全体の流れ、出来高、決算やニュースと併せて確認しましょう。
例えば、終値が100円・102円・104円・106円・108円なら、5期間の単純移動平均は104円です。新しい価格が加わると最も古い価格を外して計算します。平均を使うため急変への反応には遅れがあります。5日・25日などの期間は表示例であり、利益が出る設定という意味ではありません。
出来高はその期間に成立した売買の株数です。値上がりと取引の活発さを一緒に見る材料になりますが、売買には買い手と売り手がいるので「出来高が多い=買い手だけが多い」とは解釈できません。株式分割などで過去の価格や出来高の表示条件が変わる場合もあります。
テクニカル分析:売買サインを結果の保証にしない
移動平均線は一定期間の価格を平均したものです。MACDは移動平均線どうしの差などを使い、RSIは一定期間の値上がり・値下がりの幅から値動きの偏りを見ます。いずれも価格から計算する指標なので、複数が同じ方向を示していても、独立した証拠が増えたとは限りません。
RSIの70以上・30以下は、買われ過ぎ・売られ過ぎを見る代表的な目安です。ただし、強い上昇や下降が続く相場では、極端な値のまま推移することがあります。30以下なら底、70以上なら天井と決めず、トレンドと価格の動きを併せて確認します。算出期間や計算方式が違えば値も変わります。
| 見えたサイン | 避けたい決めつけ | 追加確認 |
|---|---|---|
| RSIが30以下 | すぐ反発する | 下落が続いていないか、悪材料や決算発表があるか |
| 移動平均線を上抜け | 上昇トレンドが確定 | 一時的な値動きか、終値で維持したか、出来高や直近高値との関係 |
| MACDが上向きにクロス | 購入後に必ず上がる | 横ばい相場で交差を繰り返していないか、設定と売買ルールが整合するか |
決算発表や重要なニュースで、翌日の価格が大きく飛ぶこともあります。逆指値を置いていても、注文方法や市場状況によっては予定価格で売却できません。予定した損失額だけでなく、想定を超える損失も考えて資金を配分します。
移動平均線のゴールデンクロス:短期線が長期線を上抜ける
短期の移動平均線が、より長い期間の移動平均線を下から上に抜ける動きを「ゴールデンクロス」と呼びます。下の例では、灰色が終値、赤の実線が5日単純移動平均線(SMA)、青の破線が25日SMAです。表示期間は説明用で、推奨設定ではありません。

この例のクロスは第79営業日に確認できます。ただし、移動平均線は過去の価格を平均するため、株価の反発が始まった日とクロスの日は一致しません。株価が移動平均線を上抜けることと、2本の移動平均線が交差することも別です。クロス後に上昇が続くとは限らず、この架空例でも後半は下向きに交差する「デッドクロス」が生じています。
MACDのゴールデンクロス:MACDがシグナルを上抜ける
MACDでは、MACD線がシグナル線を下から上に抜ける動きをゴールデンクロスと呼びます。下の例は、交差前後の違いが分かるように用意した別の架空の終値から、MACD=12日EMA−26日EMA、シグナル=MACDの9日EMAとして計算しています。EMAは直近の値に大きな重みを置く指数平滑移動平均です。設定や初期値の扱いによって表示値は変わります。

この例では、MACDがまだマイナスの位置でシグナルを上抜けています。シグナル線との交差と、ゼロラインの上抜けは別の条件です。クロスだけで上昇トレンドへの転換を確定せず、株価の高値・安値、より長い時間軸、出来高などを確認します。横ばい相場では交差を繰り返し、取引を増やすと費用が積み重なることもあります。
| 種類 | 上抜けるもの | 追加で見ること |
|---|---|---|
| 移動平均線 | 短期の移動平均線が長期の移動平均線を上抜ける | 長期線の向き、価格との位置関係、クロス後の推移 |
| MACD | MACD線がシグナル線を上抜ける | ゼロより上か下か、株価のトレンド、交差を繰り返していないか |
RSIの計算条件と、数値を比べるときの注意
RSIは通常0〜100の範囲で表示されます。基本的な考え方は、一定期間の平均上昇幅を、平均上昇幅と平均下落幅の合計で割って100を掛けるものです。平均の求め方には違いがあるため、同じ「14期間」でもサービスや初期値によって一致しないことがあります。日足の14期間と週足の14期間も別の情報です。
説明用に、平均上昇幅3円、平均下落幅1円と仮定すると、3÷(3+1)×100=75です。この数字は値動きの偏りを表し、上昇する確率が75%という意味ではありません。上下の変化がない場合などの表示は、利用するツールの仕様を確認します。
価格が安値を更新しているのにRSIが前の安値より高い、といった不一致は「ダイバージェンス(逆行)」と呼ばれます。勢いの変化を調べる材料になりますが、その後の反転や時期を確定するものではありません。価格そのものの動き、出来高、企業のニュースを併せて調べます。
チャートを「天気図」のように使う
楽天証券の参考資料では、チャートを天気図になぞらえています。状況の読み取りを行動に結び付ける、という考え方です。本記事ではその発想を、次のような確認メモに置き換えます。
- 観測:価格はどちらに動き、取引はどの程度成立しているか。
- 仮説:その動きが続く場合と、逆方向に動く場合を両方書く。
- 備え:取引を見送る条件、予定数量、前提を見直す条件を先に決める。
天気が変われば予定を変えるように、投資でも前提が変わったら再確認します。ただし、チャート指標は天気予報の降水確率と同じ統計的な確率ではありません。「サインが出たから何%の確率で上がる」と読み替えないことが大切です。
トレンドとモメンタムを分けて確認する
トレンドは動く方向、モメンタムは値動きの勢いです。方向が上向きでも、上昇幅が縮まるなど勢いが弱くなることはあります。反対に、下落の勢いが弱まっても上昇が始まったとは限りません。
| 架空の終値 | 観察できること | まだ判断できないこと |
|---|---|---|
| 100→104→109→115円 | 上昇し、各期間の上昇幅も4・5・6円と拡大 | 次の期間も上昇するか |
| 100→106→110→112円 | 上昇しているが、上昇幅は6・4・2円と縮小 | ここが天井か、いったん休んで再上昇するか |
| 115→109→105→103円 | 下落しているが、下落幅は6・4・2円と縮小 | 底打ちしたか、さらに下落するか |
まず予定する保有期間に近い時間軸で方向を確認し、より短い時間軸で直近の値動きを調べます。日足では反発していても週足では下落中、ということは起こります。この表の短い価格列だけでトレンドの成立を判定せず、高値・安値の推移や移動平均線などを一緒に記録してください。
順張りと逆張り:買う理由と失敗する場面
ここでは現物株を買う場合に絞って説明します。順張りは上昇の流れの継続を期待して買う考え方、逆張りは下落後などに方向の変化を期待して買う考え方です。単に前日比がプラスかマイナスかではなく、どの時間軸の流れを基準にしたかを明確にします。
| 考え方 | 検討場面の例 | 失敗する場面 | 購入前に記録すること |
|---|---|---|---|
| 順張り | 高値・安値の切り上がりなどを確認し、上昇の継続を検討 | 買った直後に流れが反転する。一時的な上抜けに反応する | 上昇が続くという仮説と、その前提が崩れる条件 |
| 逆張り | 下落や売られ過ぎに注目し、反発を検討 | 業績悪化や下落が続く。反発の根拠を確認せず追加購入する | 反発を期待する理由と、さらに下落した場合の対応 |
上昇中の一時的な下落を買う「押し目買い」は、短い時間軸では逆方向への購入でも、長い時間軸では順張りになる場合があります。呼び名だけで安全性を判断しないでください。
架空の例:同じRSIでも判断の前提が違う
A社は決算見通しを維持し、株価が一定の範囲を往復していると仮定します。B社は業績を下方修正し、安値を更新し続けていると仮定します。両社のRSIが同じ28でも、事業の状況や値動きは異なります。A社にも反発の保証はなく、B社の購入を「売られ過ぎ」の一言で正当化することもできません。
指標が複数一致しても、移動平均線・MACD・RSIの多くは同じ価格データから計算されます。数が多いだけで確度が高まったと考えず、企業の資料やイベント、出来高など別の観点を確認します。あとから都合のよい期間設定だけを選ぶと、過去にうまく見える結果を作りやすいため、設定と判断を記録して振り返りましょう。
購入前の判断を1枚に記録する
買う理由に加えて、「何が変わったら見直すか」を先に書くと、値動きに合わせて理由を後付けしにくくなります。以下は記入用の項目であり、特定の売買戦略を推奨するものではありません。
| 項目 | 記入すること |
|---|---|
| 目的・期間 | 配当・企業成長・短期の値動きなど、何を目的にいつまで保有するか |
| 資料と確認日 | 決算資料のURL、業績の対象期間、指標が実績か予想か |
| 購入の根拠 | 同業比較、利益の変化、価格の条件を自分の言葉で書く |
| 見直す条件 | 業績下方修正、前提の崩れ、価格条件、保有期限など |
| 資金と数量 | 生活費を除く投資資金、1銘柄への偏り、取引単位を確認 |
| イベント | 決算日、配当の権利日、重要発表、注文の有効期限 |
架空の例:数量から損失額を確認する
購入予定価格1,000円、見直し価格950円、100株なら、価格差による損失は(1,000−950)×100=5,000円です。購入代金は10万円です。手数料などは含まず、950円で売れる前提の計算なので、急落や流動性不足で実損失が増える可能性があります。予定する数量でその損失を受け入れられない場合は、取引単位も確認して数量を減らすか見送ります。
最初の一歩は、気になる1社について上の記録を埋めることです。必要な資料が見つからない、利益の増減理由を説明できない場合は、購入を急がず調べる項目を残しましょう。
分析を試す前に、証券会社の使い方と条件を比較する
上の確認メモを作ったら、利用予定の証券会社で必要な情報をどこまで確認できるかを調べましょう。すでに口座がある場合は、まず今のツールを確認すれば十分です。分析の学習だけなら、企業のIR資料や証券会社が公開している解説も利用できます。
機能・費用・申込条件は、各社の最新の案内で確認してください。
| 比較項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 企業情報 | PER・PBRの実績/予想の区別、情報の更新日、決算資料への導線 |
| チャート | 日足・週足の切替、移動平均線・RSI・出来高の表示と設定 |
| 注文と費用 | 取引単位、指値・逆指値などの注文条件、手数料と適用条件 |
| 利用環境 | スマートフォン/PCの操作性、利用資格、ツールの利用条件 |
以下は広告です。リンク経由の申込みで、当サイトが報酬を受け取る場合があります。
口座の開設を決める前に、目的・投資資金・注文方法を確認してください。特定の証券会社を選んでも、分析の精度や利益が保証されるわけではありません。
参照した一次資料
確認日:2026年10月11日。楽天証券のPDFは2021年の学習資料として参照し、当時の銘柄例・商品条件を現在の推奨として扱っていません。図版の転載は行わず、比較表と数値例は当サイトで作成しています。数値例は説明用の架空例で、実在する銘柄の評価や取引実績ではありません。

